鬼滅の刃から学ぶスピリチュアル~祖霊信仰はいつから日本にある?祖霊信仰の起源は神道?仏教?

祖霊信仰という言葉は神道の言葉のように感じられますが、仏教だったらご先祖様という言葉になるかもしれません。

小さい頃からお盆になるとおじいちゃん、おばあちゃんの家に帰りお墓参りをしたり仏壇に手を合わせたりと、ご先祖様を身近に感じる人も多いのではないでしょうか?

日本人の多くに「あなたの宗教は?」と質問すると、「私は無宗教です」という人が多いようです。しかし先祖を敬う気持ちはほとんどの日本人が宗教観とは違う所で祖先を大切にしているようです。

今回は「祖霊信仰とは何か」を次の2つの視点から考察してみたいと思います。

  • 祖霊信仰について:祖霊信仰の起源
  • 日本の祖霊信仰について:日本独自の祖霊信仰について

日常の中に溶け込んでいる、日本人の心の中にある祖霊信仰がどうして生まれたのか・・・

今回は次の4つを考察しました。

  • 祖霊信仰の考え方
  • 祖霊信仰の起源

祖霊信仰の考え方

日本では、仏教が入ってくる以前から、祖神・ご先祖様という祖霊信仰があったのではないかといわれており、この考えは後の神道、神社の神様の教えの元となる一つとされています。仏教が入ってくると家に仏壇を置いたり、お盆やお彼岸にご先祖様をお祀りするようになりました。それは「神道」には先祖を祀るという概念が無かったためだと考えられます。神道では人が亡くなると肉体は単なる入れ物なのでそれ自体を悼む事はありません。

神道は死を忌み嫌う

 神道では、死を忌み嫌います。お寺に墓地が併設されているのはよく見かけますが、神社に墓地はありません。これは神道が死を忌避することを顕著に表しています。また、神棚がある家で死者がでた場合は神棚を半紙で封じますし、喪が明けるまでは神社の境内に入るべきでないとされています。地域のお祭りへの参加も憚られ(はばかられ)ます。

 死者の遺体を目の前にしたときに、私たちは愛惜と嫌悪という矛盾にさいなまれます。これまで大切に思っていた人への愛情や親しみがある反面、遺体に対する恐怖や嫌悪が私たちの中で共存してしまうのです。腐臭が漂ったり、伝染病を蔓延させたりと公衆衛生上の実際的な問題も考慮するのは、何も日本人に限ったことではない人類共通の情緒反応と言えます。

 そして、人間の自然な情緒反応通りともいえますが神道は死を「穢れ・けがれ」として避けます。ところが、仏教は死を穢れとして恐れたり避けたりすることはしません。仏教にとって死は、別の世界への転生(輪廻転生)だったり、極楽浄土への旅立ちだったりするからです。

 神道の中心的神様は天照大神(アマテラスオオミカミ)で、太陽を象徴します。その反動として太陽の光の届かない「闇」を恐れます。『古事記』や『日本書紀』などで死者の行きつく世界は、黄泉国(よみのくに、よもつくに)、常闇国(とこやみのくに)、根の国(ねのくに)などの暗黒の世界であり穢れた場所です。仏教の来世にきらびやかな極楽浄土があったりするのとはまさに正反対ですね。

 そのため、奈良時代に仏教が伝来してからというもの、「人々の死生観のよりどころ」として、また、「死者供養の役割」は仏教にゆだられたのです。「輪廻転生」や「浄土思想」の死後観、それに基づく教義や作法を仏教がすでに持ち合わせていたという点が活かされ、日本人の精神的なよりどころとなったのではないかといえるでしょう。

しかし、神道も全く先祖を忘れている訳ではありません。お正月に「門松」や「しめ縄」、「鏡餅」など年神様を迎えるための行事も、地域によっては「年神は家を守ってくれる祖先の霊」として祀る地域もあるのです。

祖霊信仰の起源

神道における祖霊信仰は縄文時代、弥生時代から行われていると考えられています。しかし、キリスト教やイスラム教のように教祖がいたわけではなく「自然発生的に生まれた信仰」「自然神をお祀りする信仰」となります。

先祖が開いた農地に植えた稲作が育ち、先祖への感謝が生まれ、その間何も災害がなかったことは、太陽や雨という自然物への感謝が生まれるようになります。その考えが徐々に広まると、祖先を祀る働きが生まれ自然と「祖先信仰」が人々の日常の中に生まれたと言われています。

また、このような祖先崇拝は、日本を除いては中国や太平洋地域の一部の限られた場所にしか見ることができません。

日本の祖霊信仰について

お盆

お盆は日本古来の祖霊信仰と仏教が融合した行事です。

かつては太陰暦の7月15日を中心とした期間に行われていました。明治期には太陽暦が採用され、新暦7月15日に合わせると農繁期と重なってしまい支障が出る地域が多かったため、新暦8月15日をお盆とする地域が多くなりました。

お盆の明確は起源は分かっておらず、1年に2度(初春・初秋)の満月の日に祖先の霊が子孫のもとを訪れて交流する行事があり、時代が流れていくとともに祖霊の年神として神格を強調されお正月の祭りに変化していきました。8世紀頃には夏に祖先供養を行う風習が確立されたと考えられています。

実はお盆帰りだけでなくお盆前には準備があります。

それが、

  • 釜蓋朔日(かまぶたついたち)
  • 七夕
  • 迎え火
  • 送り火

です。

地域によって異なりますから、やったことはないけれど聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。詳しく見ていきましょう。

  • 釜蓋朔日(かまぶたついたち)(1日)

地獄の窯の蓋が開く日。この日を境に墓参りなどをして、ご先祖様などをお迎えし始めます。地域によっては山や川から里へ通じる道の草刈りをし、普段山や川にいる故人の霊が通りやすいようにするという意味があります。

地域によっては「この時期は池や川、海などに近づいたり入ったりしてはいけない」というところもあるそうです。

  • 七夕(7日)

七夕は「棚幡」(たなばた)とも書き、昔は故人を迎える精霊棚とその棚に安置する幡(ばん)をこしらえる日でした。秋の豊作を神様に祈るためです。笹は依り代で、先祖が笹を目印に家に帰ってくると考えられていました。

現在のように短冊を吊すようになったのは江戸時代以降で、徐々に願い事を書いて笹竹に吊るのが習わしに変化していったのです。

  • 迎え火(13日)

一般的には7月13日もしくは8月13日の夕刻に行います。火を焚くのはご先祖様が迷子にならないようにという願いを込められています。

  • 盆踊り(16日)

寺社の境内などに老若男女が集まって踊るのを盆踊りと言います。一度でも盆踊りに参加したことがある人は多いのではないでしょうか。これは地獄での受苦を免れた亡者たちが、喜んで踊る状態を模したといわれており、主にお寺の境内で行われることが多いですが最近は駅前広場などの人が多く集まれる広場に露店を置き行うところも多くなっています。

  • 送り火(16日)

特に有名なのが京都の五山送り火ではないでしょうか。地域によっては川へ送る(灯籠流し)を行う風習があるところもあります。昨今では火を焚ける場所が限られているため、電気式の盆提灯を使う場所もあります。そうしてご先祖様を山もしくは川まで送り出します。

お彼岸

お彼岸とは「彼の岸」つまり悟りの境地を意味し、サンスクリット語である「パーラミンター(波羅蜜多)」の漢訳語である「到彼岸」からきています。

この行事は年に2回あり、

  • 春彼岸 : 毎年3月の春分の日をはさんで前後3日合計7日間
  • 秋彼岸 : 毎年9月の秋分の日をはさんで前後3日合計7日間

だと言われています。

806年に日本で初めて仏教行事として彼岸会が行われました。それは「日本後紀」の2月条に「毎年春分と秋分を中心とした前後7日間、「金剛般若波羅蜜多経」を崇道天皇(早良親王)のために転読させた」と記されていることから分かります。

お彼岸は何をするかと言いますと「お墓参り」です。仏壇を掃除しお花やお線香を供えご先祖様に対し合掌を捧げ、中にはおはぎ、団子やお霊供膳(れいぐぜん)、珍しいお菓子、果物などをお供えするところもあります。

お正月

あまりご先祖様を迎えるイメージがありませんが、実はお正月に迎える「年神様」は家を守ってくれる祖先の霊です。豊作を守護する神と家を守護が同一視されたのと、田の神も祖霊も山から降りてくるとされていたため、家を守る年神様も祖先の霊と考えられています。

それがよくわかるのがお正月に見られる「門松」、「しめ縄」「鏡餅」です。

  • 門松

今では買ってくることが多くなりましたが、昔は近くの山に行って採ってきて「松迎え」を行います。山から採ってくる、つまりは神様を山からお迎えする「依り代」の役割を果たしているためお正月になると飾られるようになりました。

  • しめ縄

秋に収穫された稲の藁で作られた「しめ縄」を年神様を迎える場所に貼り、聖なる空間を作ります。秋に収穫された稲の藁で作るのは、田の神に見守られ育った稲には「稲魂(いなだま)」という霊魂が込められていると考えられていたからです。

  • 鏡餅

丸くして積み重ねられた鏡餅は、心臓の形すなわち霊魂を表したものだと考えられています。田の神に見守られながら育った稲が米となり、そのお米を使用して作られた鏡餅を神さまにお供えし、それを人間が食べることによって新たな力が授けられると言われています。

このことからお正月も祖先を信仰する「祖霊信仰」だと言われています。

兵庫県 淡路島「ヤマドッサン」

一つ特殊な年神様をご紹介しておきましょう。

ヤマドッサンとは「山年神」を意味します。まさに山からやってくる年神さまです。

田の神・山の神・年神である尉(老翁)と姥をヤマドッサンと呼び、正月9日に鍬(くわ)と簑笠(みのかさ)の前に供物をいろいろ並べ年神さまをお迎えして豊作を祈ります。

祖霊信仰についてのまとめ

このあたりでまとめてみましょう。

  • 祖霊信仰の考え方

仏教が入ってくる以前から「祖神」、「ご先祖様」「仏様」という祖霊信仰があったといわれている。またこの考えは後の神道、神社の神様の教えの元となる一つとされています。

  • 祖霊信仰の起源

祖霊信仰は縄文時代、弥生時代から行われていると考えられております。しかしキリスト教やイスラム教のように教祖がいたわけではなく「自然発生的に生まれた信仰」である。

このような祖先崇拝は日本を除いては、中国や太平洋地域の一部の限られた場所にしか見ることができない。

  • 中国の祖霊信仰

中国最古の王朝である「殷の時代」にはもうすでに祖先崇拝の文化が存在していたと言われており、周の時代になると、福は祖先から災いは天からもたらされるという考えになり、子孫の幸福のために祖先を祀るという考えが生まれた。中国の祖先崇拝は少し厳しい。

  • 韓国の祖霊信仰

韓国にも日本の法事に当たる祭祀があり、ソルラル(旧正月)、チュソッ(秋夕)、曽祖父、祖父、父の忌日に家族が集まって行われます。またこの祭祀を行う際は将来この家の血を残す長男が行う。

イベントとして迎えるお正月も、実は祖先崇拝がもとになっているとは驚きですよね。

我々日本人が日常的に行っていることが実は仏教が元になっていたり、神道が元になっているものは他にも沢山あります。無宗教だと思っていたけれどそれはもしかしたら、日常に溶け込みすぎて「無意識」になってしまっているからかもしれません。これを機に調べてみると新たな世界に出会え、考え方が変わること間違いなしです。

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